◎はぁ、それでその後は?
「その後ね、海外に行きたくなって、お金貯めて初めて海外に行った。バンコクやったけどね。35歳くらいやったかな。それからは、日本でバイトしては海外に出る日々やね。アジア、アフリカ、いろんな国に行ったよ。バイトはホテルの大道具係。忙しいときはえらい忙しかったけど、あれはええバイトやった。そのうちね、やっぱりなんかせぇなあかん、と思うようになったけど、何をしてええかわからんのよね。やっぱり音楽かなぁと思ったり、絵かなぁと思ったりしてたけど、いまいちピンとこんかったね。それでやっぱりバイトして海外に出る人生や」
◎じゃ、また絵を描き始めるのはずいぶん遅いですよね。
「うん。47歳の時やったか、久しぶりに京都の美術館に入ったのよ。西洋画の展覧会で、セザンヌとかモネとかの絵があったの。不思議なんがね、その絵を見ても感動せんのよ。若い頃やったら大感激やで。でも、なーんや、そんな技法かいな、と思ってしまうの。こんなんやったらオレのほうがええやんか、って。それでまた絵を始めた。でもそのとき、今描き始めたら、この後の人生は描くこと一本でいく、と思ったよ。それからは、海外に出るときの荷物に絵の具とスケッチブックが増えたの」
◎それでなぜタイに住むことに?
「バンコクのプーカオトンの下で絵を描いてたんよ。そしたら、タイ人の女の人が後ろから絵を覗き込んでた。それが今の同居人。まぁそのせいやわね。で、同居人の実家がチェンマイの北のほうの田舎やっていうんで、こっちに来ることになったんよ」
◎なるほど。今はどのくらいのペースで描いてらっしゃるんですか?
「ポストカードサイズはやめて、もう少し大きいサイズを描いてるんやけど、10日間で一枚仕上げる感じかな」
◎その場所に毎日通って描くんですか?
「そう。有名な画家はね、ある程度まで描いたら後はアトリエとかで描く人多いのよ。はなっから写真を元に描く人もおるね。でもオレはその場所で描いてなんぼのもんや、と思てるから。10日かかるでしょ。その間に、陽射しの様子が変わったりとか、葉っぱが落ちたりとか、店の人が変わったりとか、あるのよ。それがええのよ」
◎描いてる間の周りの人の反応はどうですか?
「最初は、何人かわからんのが来た、と思うんやろね、遠巻きにして警戒してるけど、出来上がってくるとみんなうれしそうになって、応援してくれるね。子供らなんかね、これ、タバコや、とか、細かいとこまで見てておもしろいね。今はチェンマイ市内で描いてるけど、通行人もよう声かけてくれるよね。名刺くれ、とか言うてね。持ってないから渡されへんけど」
◎これからの抱負は
「それはええ絵を描いていくことやね。トイレとかに飾ってもらってさ、用足ししてるあいだに、じーっと隅々まで見てもらえたりしたらええねぇ。ポストカードにしてもええかもね。いやー、誰かつくってくれんかなー」
酒田さんは、チェンマイから北に約100キロの、チャイヤプラガン郡タムタップタオ村に住んで描いておられましたが、最近はチェンマイ市内で描かれていますので、街角で見かけることもあると思います。
無邪気でかわいらしい同居人のデーンさんに、酒田さんの良いところを聞くと、「ウソや見栄がないところ」と即答。
あぁ、その気持ち、わかります。
酒田さん、いつもありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします!
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