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風来坊の画家(?)
酒田充康さん インタビュー

Sakata's Gallery

 
毎号、ランナエークスプローラーの表紙を飾る、チェンマイの風景を切り取った緻密な絵は、一度チェンマイに来たことがある人なら、どこかの街角で見たことがある、と感じることでしょう。この絵を描いているのは、酒田充康さん(56歳)。さらりと自然にチェンマイに住み着いて約6年。第1号から絵とコラムを寄稿してくださっている酒田さんに初めてお話をお伺いしました。(酒田さんは兵庫県出身のため、関西弁です。関西弁でお読みください)

◎絵の具と画板を入れるかばんと、
簡易机とイスがいつもの道具。

◎この絵、油絵みたいに見えますけど、水彩画ですよね?
「そう、水彩画。油絵は高いのよ。絵の具も、キャンバスも。一作に時間もかかるし、それに外で描けやんでしょ。オレは風景画を、そのモチーフの前で描くのをモットーにしてるから、それでは困るわけ。普通、水彩画っていうたら、サッサッサーと淡く色をのせて、数時間で仕上げるようなイメージやけど、オレはそんなイメージとかにとらわれんと、自分の条件にあった材料を使って描けばええと思ってね。だいたい、発展途上国の人なんか、板切れに白ペンキ塗って、そこに描いてるやん。それでええのよ」

◎絵を描き始めたのはいつ頃なんですか?
「最初に描き始めたのは、18歳くらい。正式に習ったわけやなくて、近所の画廊に出入りして、見よう見まねで描き始めたんよ。その頃は油絵やったけど、展覧会に出展して、賞もねらっとったよ」

◎じゃ、それからずっと絵を?
「いや、4年くらい経った頃に、スランプになってね。そしたらちょうど友人にバンドを組まんかと誘われて、音楽を始めてしもうて、絵からは遠ざかった。それからは、昼間は仕事で夜はバンド。このまま行くんかな、と思っとったけど、出演してたクラブが潰れたりとかするわけよ。まぁそれでも、セミプロのレベルまで行ったよ。実は紅白も狙ってたし」

◎はぁ、それでその後は?
「その後ね、海外に行きたくなって、お金貯めて初めて海外に行った。バンコクやったけどね。35歳くらいやったかな。それからは、日本でバイトしては海外に出る日々やね。アジア、アフリカ、いろんな国に行ったよ。バイトはホテルの大道具係。忙しいときはえらい忙しかったけど、あれはええバイトやった。そのうちね、やっぱりなんかせぇなあかん、と思うようになったけど、何をしてええかわからんのよね。やっぱり音楽かなぁと思ったり、絵かなぁと思ったりしてたけど、いまいちピンとこんかったね。それでやっぱりバイトして海外に出る人生や」

◎じゃ、また絵を描き始めるのはずいぶん遅いですよね。
「うん。47歳の時やったか、久しぶりに京都の美術館に入ったのよ。西洋画の展覧会で、セザンヌとかモネとかの絵があったの。不思議なんがね、その絵を見ても感動せんのよ。若い頃やったら大感激やで。でも、なーんや、そんな技法かいな、と思ってしまうの。こんなんやったらオレのほうがええやんか、って。それでまた絵を始めた。でもそのとき、今描き始めたら、この後の人生は描くこと一本でいく、と思ったよ。それからは、海外に出るときの荷物に絵の具とスケッチブックが増えたの」

◎それでなぜタイに住むことに?
「バンコクのプーカオトンの下で絵を描いてたんよ。そしたら、タイ人の女の人が後ろから絵を覗き込んでた。それが今の同居人。まぁそのせいやわね。で、同居人の実家がチェンマイの北のほうの田舎やっていうんで、こっちに来ることになったんよ」

◎なるほど。今はどのくらいのペースで描いてらっしゃるんですか?
「ポストカードサイズはやめて、もう少し大きいサイズを描いてるんやけど、10日間で一枚仕上げる感じかな」

◎その場所に毎日通って描くんですか?
「そう。有名な画家はね、ある程度まで描いたら後はアトリエとかで描く人多いのよ。はなっから写真を元に描く人もおるね。でもオレはその場所で描いてなんぼのもんや、と思てるから。10日かかるでしょ。その間に、陽射しの様子が変わったりとか、葉っぱが落ちたりとか、店の人が変わったりとか、あるのよ。それがええのよ」

◎描いてる間の周りの人の反応はどうですか?
「最初は、何人かわからんのが来た、と思うんやろね、遠巻きにして警戒してるけど、出来上がってくるとみんなうれしそうになって、応援してくれるね。子供らなんかね、これ、タバコや、とか、細かいとこまで見てておもしろいね。今はチェンマイ市内で描いてるけど、通行人もよう声かけてくれるよね。名刺くれ、とか言うてね。持ってないから渡されへんけど」

◎これからの抱負は
「それはええ絵を描いていくことやね。トイレとかに飾ってもらってさ、用足ししてるあいだに、じーっと隅々まで見てもらえたりしたらええねぇ。ポストカードにしてもええかもね。いやー、誰かつくってくれんかなー」


 酒田さんは、チェンマイから北に約100キロの、チャイヤプラガン郡タムタップタオ村に住んで描いておられましたが、最近はチェンマイ市内で描かれていますので、街角で見かけることもあると思います。
 無邪気でかわいらしい同居人のデーンさんに、酒田さんの良いところを聞くと、「ウソや見栄がないところ」と即答。
あぁ、その気持ち、わかります。
酒田さん、いつもありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします!

◎目的地に着くと、周りのおばちゃん
達からたちまち声がかかります。酒田さん、
なかなか人気者。朝10時ごろから夕方4時
ごろまで、毎日通って絵を仕上げます。

◎ワット・スワンドーグ
(2001年。当誌創刊号表紙に掲載)

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